福島知枝子
ベルギーの首都ブリュッセルは、欧州連合(EU)本部を擁する欧州の首都である。1830年にオランダから独立したベルギーは、1993年に立憲君主制の連邦国家として再編された。国民国家である加盟国が国境を取り払う形で統合と一体化が進むEUの中にあって、ベルギーでは逆に国内を二分する言語と民族の壁が高くなり、将来の国家分裂の可能性さえ指摘されている。
中央集権国家だったベルギーが現在のような連邦制を採るようになるとは、30年以上前には、想定外の「極端な」選択肢との見解もあった。連邦制への移行はオランダ語系住民の連邦主義の要求を満たす結果となったが、民族間の言語対立は沈静化に向かわず、むしろ新たな摩擦が生まれている。本稿では、過去から現在に続くベルギーの言語対立のうち、最近、特に注目されているブリュッセル首都圏選挙区(BHV)の現状と問題点を現地調査で明らかにし、今後の展望を探る 。